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大阪家庭裁判所 昭和46年(家イ)410号 審判

申立人 国籍韓国 住所守口市

白栄子(仮名)

相手方 国籍韓国 住所守口市

白順聖(仮名)

他一名

主文

申立人と相手方両名との間にそれぞれ親子関係がないことを確認する。

理由

本件申立理由の要旨はつぎのとおりである。

申立人は、外国人登録原票上相手方両名の子となつているが、真実はそうでなく、申立人親権者岩下三恵子と季政義こと季起俊との子である。すなわち、三恵子は上記起俊と昭和三八年二月頃婚外関係を結び同年六月頃から事実上の夫婦として同居しその間に申立人をもうけたが、当時上記起俊との婚姻届出がなされていなかつたところから、申立人を非嫡出子として届出るに忍びず、同人の将来を考慮して、起俊の父母である相手方両名らと相談して、相手方両名間の子として生まれた旨の不実の届出をなし、上記原票上にそのように記載されたものである。

そこでこのたび戸籍の記載を真実の身分関係に合致させたいので主文同旨の審判を求める。

よつて審案するに、調査の結果によると、相手方両名が肩書地に住所を有することの明らかな本件について、わが国の裁判所が裁判権を有し、かつ当家庭裁判所が管轄権を有することはいうまでもない。

つぎに本件のように虚偽の出生届出にもとづき公簿上に親子として記載されている場合に、その表見上の親子間に親子関係がないことを明らかにする準拠法については、法例に直接の規定はないが、かような親子関係の存否確定の問題は父母と子との間にそれぞれ親子関係がないことを明らかにするものであるから、法例第一八条第一項を類推適用して、当事者である父母と子との双方の本国法を準拠法とみるのが相当である。ところで調査の結果によると、申立人は日本人女岩下三恵子の非嫡出子(出生当時は父の知れない子)として国籍法第二条第三号により日本国籍を有すること明らかであるから、申立人については日本法、相手方両名については大韓国民法を準拠法とみるべきところ、同国においては、現にわが国におけると同じく、親子関係存否の確認は家事審判法による家庭法院の審判事項とされており、したがつて本件申立を受けたわが国の家庭裁判所が、本件のような親子関係不存在確認の手続について、法廷地法たるわが国の法律によるべきものとして家事審判法第二三条によりうること明らかである。

さて当裁判所調停委員会において当事者間に主文同旨の合意が成立し、その原因事実に争いがないし、さらに必要な調査をしたところ、上記申立理由と同旨の実情のほか申立人栄子は韓国戸籍上起俊と三恵子間の子として記載されていることが認められ、これによると、申立人が相手方両名の子でない旨の上記合意は正当である。

してみると本件申立は理由があるからこれを認容し主文のとおり審判する。

(家事審判官 西尾太郎)

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